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マイマイカブリの謎!〜なぜ集団越冬するのか〜

マイマイカブリの謎!〜なぜ集団越冬するのか〜

あなたはマイマイカブリという昆虫をご存知でしょうか?マイマイカブリは日本を代表する甲虫で飛ぶことができず、地表を歩きながら行動しています。

〔キタカミミナミマイマイカブリ〈出典:コアオマイマイカブリ・キタカブリをもとめて〉〕

マイマイカブリの越冬方法は基本的に朽木や土中に潜って寒さをしのいでいます。その際に一頭で越冬するケースも多いのですが、時には100を超える集団で1箇所に越冬するケースもあります。筆者も2019年に長野県に生息するマイマイカブリで3桁の集団越冬を目撃しました。集団越冬はマイマイカブリでは珍しいことではありません。しかし、なぜ1匹でも越冬できるのにわざわざ集団になるのかがまだわからない人も多いのではないでしょうか?

今回はマイマイカブリの集団越冬の謎と筆者の考察です。

 

マイマイカブリの越冬

マイマイカブリの越冬について筆者の知見などをまとめます。

越冬前

〔エゾマイマイを食すエゾマイマイカブリ〕

マイマイカブリは春繁殖型のオサムシです。例えば5月末に卵として生まれれば、7月~8月には成虫になるという甲虫の中でもかなり早い成長速度です。

〔サッポロマイマイを食すエゾマイマイカブリの幼虫〕

成虫になったマイマイカブリは越冬に備えて、カタツムリ(偏食でカタツムリでしか生殖する栄養素を補給できません)を中心に様々な栄養素をとりこみます。

9月になる頃には体重も増加し、いつでも越冬できる体制を整えている個体が多いです。しかし、この段階ではまだ繁殖を行うには生殖器が未発達です。

越冬期間

マイマイカブリは地域にもよりますが、11月~4月の5ヶ月間を越冬で過ごします。長崎県などの比較的南に属しているマイマイカブリ(ホンマイマイカブリ)は冬の間でも潜ることをせずにただじっと隠れて活発化していないだけと聞いたこともありますが、それ以外の亜種はすべて越冬すると考えられています。

越冬場所

〔朽木で越冬しているキタカブリ〕

主にマイマイカブリが生息している環境は大きく分けて2箇所になります。山などの森林内と河川敷です。オサムシ全体でいえることですが、河川敷付近の個体群は山間部から鉄砲水や濁流にのまれた個体が下流まで流され繁殖したケースが多いです。集団越冬は山などよりも河川敷の方が多く見られます。おそらく河川敷の方が行動範囲が限定される事でより密度が高まるためだと推測できます。

マイマイカブリは朽木や立ち枯れなどがメインの越冬場所でうす。他にも土盛や根元などでも多く越冬しています。

さてさて、これでマイマイカブリの越冬に関する大体の流れなどを解説いたしました。ここからは集団越冬について考察します。

マイマイカブリの集団越冬

集団越冬を行う理由

〔朽木で越冬しているコアオマイマイカブリ。奥でさらに複数越冬している〕

昆虫が集団越冬を行う理由に関しては2つの要因があります。

1つは集団越冬を行うことによりそれぞれの個体が発する熱や湿度を密集させることにより外界の寒さや乾燥から身を守るためです。

2つめ活動期に入ったと同時に直ぐに繁殖活動へ移行することができることです。

〔参考サイト:こんなにうじゃうじゃいるのはなぜ? 野生動物が群れる理由とは

マイマイカブリも春繁殖型であるため、2つ目の要因が大きいようにも感じますが、マイマイカブリに近い種類であるオオルリオサムシや韓国のカブリモドキが集団越冬しない点を加味すれば、1つ目の乾燥と低温から身を守るために集団越冬を行うと推測できます。

亜種により異なる集団越冬の規模

〔朽木で越冬するエゾマイマイカブリ〕

亜種により集団越冬に差はあるのでしょうか?実際に私はマイマイカブリの4亜種の越冬採集を経験しています。そのなかでエゾマイマイカブリだけは集団越冬をみたことがありません。過去にエゾマイマイカブリが5匹くらい同じ朽木からでたこともありましたが、僕の認識では二桁いかなければ集団越冬とは言い難いですね。同じ材でも多少位置が異なった場所に転々と越冬していたので、やはり偶然同じ材に入ったのでしょう。

河川敷にも何回か足を運びましたが、1匹ずつは出るものの、やはり集団越冬は発見できませんでした。

〔朽木で越冬しているキタカブリ〕

キタカブリに関しても二桁での集団越冬は実際に見たことがありません(もちろん発見例はちゃんとあります)。キタカブリより南に隣接する亜種であるコアオマイマイカブリの方が集団越冬の規模や発見例が多いように感じます。

〔木のウロで集団越冬しているコアオマイマイカブリ〕

ということは北に行くに従い集団越冬の規模が縮小する仮説も浮上するわけです。これは積雪が重要な要因と考えれます。雪で越冬している地面や朽木が覆われることで、直接外気にふれることがなく、乾燥からも守られると考えられます。

積雪が多い北海道のオサムシは集団越冬を行うことが非常に少ないことも納得ですね。

ちなみにサドマイマイカブリなんかも二桁集団越冬の報告は少数です。佐渡も豪雪地帯でしたね。

結論

以上のことを踏まえて考えてみます。

豪雪地域では、外界と越冬箇所を雪で遮断できるため、保湿と一定の温度を保つことができるため、一頭の越冬でも十分に生存が可能でしょう。

積雪量が少ない、もしくは積雪がない地域は雪による外界と遮断する防壁がないため、大規模な集団越冬を形成することにより乾燥と低温度から身を守り生存確率を上げると推測できます。

また、これは推測の域をでないのですが、昆虫は体液に不凍液に似た成分を保有することで、越冬している際にも凍りつくことを阻止しています。もちろん臨界点があり(-10~-30度など)種間でこの臨界点がことなるのですが、亜種間でも変わるのであれば、より寒い地域に生息する亜種であるエゾマイマイカブリやキタカブリはこの臨界点が他の亜種よりも低いため、集団越冬を極力行う必要がないのかなとも思います。

さてさて、今回の記事はかなり堅苦しくなってしまいましたが、私がずっと悩んでいたエゾマイマイカブリはなぜ大規模な集団越冬が発見できないのか問題に一区切りつけれたと思います!

次回の記事もお楽しみに〜👍✨